目次
はじめに
こんにちは。YUKI(@shisha_yuki117)です。
今回も今週の気になったニュースを振り返るとともに、私見を記事にしていきたいと思います。
日経ニュース振り返り
1.ロシアのウクライナ侵攻、国内IT大手で日立の影響大きく
出典:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/12308/?i_cid=nbpnxt_psnz_atype
【論点と内容詳細】
論点1.ロシアのウクライナ侵攻により、ウクライナにエンジニアリング拠点を持つ国内IT大手に影響が出ている。
論点2.日立は過去に買収した米GlobalLogicはウクライナに5か所のエンジニアリング拠点を持っており、現地の従業員をウクライナ国内外の別拠点に移動させる準備を進めている。
論点3.事態が長期化することで、日立を初めとする国内IT企業のグローバル戦略を書き換える必要も出てくる
ウクライナ情勢に関する記事です。日本国内で考えてみると、ロシアのウクライナ侵攻という報道は関係が無い出来事に思われますが、企業が経済活動をする以上、日本国内だけでなく、海外の国々と協業していくことは必要不可欠です。
記事にもある通り、IT業界ではデジタル化の波に対応できるように、または国際的な競争力を持つために海外のエンジニアリング拠点を買収しています。
ウクライナに限らず、今後他国で紛争問題が発生した際は事業継続ができなくなるかもしれないといったリスクを抱えている企業が非常に多いのです。
参考までに、ウクライナに拠点を持つ企業の動向を記載します。
■日本人駐在員が国外退避 | |
伊藤忠商事 | 駐在員は退避済み。 リモートワークで業務継続。 |
丸紅 | 化学品や農業資材の輸出入を手掛ける。 駐在員は退避済み。 |
■日本人以外も国外退避 | |
日立製作所 | 子会社拠点にエンジニアが約7200人。 周辺国への退避を準備。 |
日本たばこ産業 | 中部にたばこ工場。 ウクライナ国籍以外の従業員は退避済。 |
■現地情勢や従業員の安否、影響確認中 | |
楽天グループ | 南部オデッサに事務所。 無料通話アプリで現地シェア首位。 |
フジクラ | 西部にワイヤーハーネスの生産拠点。 アフリカ工場に生産集約中。 |
サワイグループHD | 抗がん剤「エピルビシン塩酸注射液」などの原薬を同国から調達。 |
武田薬品工業 | 現地に販売会社。 政情不安などを監視する専門チームが状況を注視。 |
■現状で業務に支障なし | |
セイコーエプソン | キエフに販売・サービス拠点。 現地スタッフが約10人。 |
住友電気工業 | 西部にワイヤーハーネスの生産拠点。 操業継続も代替生産を検討。 |
【関連用語】
米GlobalLogic
「デジタルアドバイザリー」「エクスペリエンスデザイン」「ソフトウェアエンジニアリングサービス」「ラボ(R&D)」「コンテンツエンジニアリング」「アトラシアンサービス」の6つのサービスを提供している企業。日立による買収の背景には、デジタル化の波の広がり、ソフトウェアやデザインが欠かせない時代になったことが挙げられる。日立はそれらを自社で揃えるのではなく、当社の買収を用いることで実現を試みようとしている。
エンジニアリング
科学技術を応用することにより、物品を生産する技術やその研究を総称したもの。 なお、エンジニアリングは、直訳すると「工学」という意味の言葉になる。
■コラム1:ウクライナ人からみたロシアのウクライナ侵攻
ウクライナへのロシア軍侵攻の報道が世間を騒がせていますが、今回はその件についての実情を4つの論点から紐解いていきます。
1.「ロシアはウクライナを本当に侵略するのか。」
ウクライナとロシアとの戦争はすでに8年前に始まっています。
2014年のクリミア政変の過程で、過激かつ暴力的な右派勢力が台頭し、彼らの民族主義的な主張がウクライナの時代精神のようになってしまいました。
ウクライナ東南部のドネツク、ルハンシクでは何万人もの人が戦争で亡くなり、帰る場所をなくしているのです。
また、ウクライナの東南地方にいるのは「親露派勢力」ではなく、「ロシア軍」です。
8年もの間、戦争を長引かせるためには相当な資金も軍事力も必要です。
普通に考えると一部の地方のウクライナ人の親露派達だけで構成する事は物理的にも資金的にも不可能です。現在占領されている地域は、ロシア政府の介入無しでは成り立ないのです。
2.「クリミアや東の地方では元々、ロシア語を話す人が多く、ロシアに親近感を感じる人が多い。」
「クリミアや東の地方ではロシア語を話す人が多く、ロシアに親近感を感じる人が多い」という情報をよく目にします。そして、東はロシア派、西はEU派などの「解説」を通してウクライナを東と西で分けたがる専門家も多いですが、ウクライナは一つの国です。
このような考えは日本全体を関西と関東の二つの軸で分けるのと一緒です。ウクライナは考え方やカルチャーなど違う要素がありつつも一つの国です。実際、ウクライナにはロシア語を話す人も多いですが、ほとんどがウクライナ人としての認識をもち、ロシアの一部になることは望んでいないでしょう。
そもそもなぜウクライナの一部の地方では「ロシア系ウクライナ人」が多いのかといった点を理解する必要があります。
日本ではあまり知られていませんが、第2次世界大戦前にスターリンは「ホロドモール」というジェノサイドを実行し、ウクライナ人が独立できないよう計画的に餓死させています。スターリン政権はウクライナ人から生きていくための最低限の食物も奪い取り、さらにウクライナの国境から逃げようとする人は射殺され、1,000万人もの人を命を奪ったのです。
当時、ウクライナの独立意識が高かった東や南の地方では、ホロドモールの影響は特に大きく、東や南の地方に元々住んでいたウクライナ人はスターリンによって大量虐殺され、その代わりにロシア人の住民が送り込まれています。
クリミアも同様です。報道では「クリミアは元々ロシア系住民が多い」と言われることが多いですが、事実ではありません。クリミアは元々「クリミアタタール人」が住んでいましたが、ほとんどがソビエト政権により、シベリアに強制移住させられ、多くの人の命が奪われています。
追放したクリミアタタール人を入れ替えるかのように、ロシア人が送り込まれたことから、今ではロシア系住民が多いのです。
つまり、ロシア系住民が多いのは、ウクライナ人やクリミアタタール人がロシア人によって大量虐殺されたことが背景にあります。
ウクライナがソ連から独立した後、一部のクリミアタタール人は帰還することができましたが、それでも人口の1割程度にとどまっています。そして今でも、クリミアがロシアに占領された後、クリミアタタール人は命に危険を感じながら生活をしています。
3.「ウクライナではロシア語が禁止され、ロシア系住民が反発している。」
この事実は一切ありません。
ウクライナでは必ず、どこかでロシア語で話かけられます。
ロシア語がウクライナで禁止されている事実はなく、地域によってはむしろウクライナ語を話す住民が肩身せまく暮らしている場合もあるのです。
4.「ウクライナはNATOの介入をやめるべきである。そうすれば状況は収まる。」
ウクライナはロシアの言う通りにすべき、アメリカの言う通りにすべきと言う議論をする前に強調したいのは「ウクライナが独立国家」であることです。自分の国を守るために何をすべきで、自分の国民が安心して生活できるように何をすべきかの決定権はウクライナにあるのです。
ウクライナは単純に「自分」の国民が「自分の国の中で」平和に暮らしていけることを実現しようとしているだけです。平和以外何も望んでいません。
日本には日本のことを決める権利はあり、アメリカにもその権利があります。また、ロシアにもその権利があるのにも関わらず、なぜウクライナはその決定権はないのでしょうか?なぜロシアの言いなりにならないといけないのでしょうか?
現在の各国の主張、情勢というのはウクライナにとって理不尽です。
ウクライナは遠い国の出来事で自分には関係ないと思うかもしれません。
1点覚えていただきたいのは、2014年まではウクライナは日本と同じく、一切戦争をしてこなかった国です。
戦争をしてこなかっただけではなく、1994年にはブダベスト覚書に署名しています。これにより、ロシアを含む協定署名国が、ウクライナの既存の国境を尊重することを条件に自ら核兵器を手放しています。今後も戦争をすることがないという認識であったために、平和に慣れすぎてロシアからクリミアを奪われた時には、まともに機能する軍隊も、軍用品もありません。軍事力があれば、今の状況は起こっていなかったかもしれません。
核兵器を手放すことによって国境を尊重してもらうことを約束されたのにも関わらず、簡単にその約束を破棄されると今後、自ら核兵器を手放す国は果たして出てくるのでしょうか。
2014年のマレーシア航空17便撃墜事件では、オランダ、マレーシア、オーストラリアなど298人の一般人がロシアによって命を奪われています。
以上のように、今のロシアのさらなる侵略を許せば、軍事力によって他の国の乗っ取ることを許すことに他なりません。果たして各国の安全は今まで通りに保証できるのでしょうか。
■コラム2:ぜひ手に取りたい一冊
今回の記事に関連したウクライナの歴史について書かれている本をご紹介します。
『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国』
【本書のPoint】
●数世紀前からウクライナ的性格をもつ国が現れては消え、20世紀に入ってからは6度も独立を宣言して現在に至るウクライナ
● 大国の陰で絶えず浮沈を繰り返してきた小国の悲哀
●ウクライナの地における長く複雑な歴史を読み解く
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回はウクライナ情勢に関わる記事とコラムをご紹介しました。
日本で我々は好きなことに思いっ切り取り組める一方で、他国ではそのような自由が制限されていたりもします。海外だからと言って他人ごとにせず、平和や安全について考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
それでは、今回も記事をお読みいただきありがとうございました。